刑事事件Q&A

月別アーカイブ: 2017年4月

「自首」とはなんですか?

刑法42条には、「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を軽減することができる」と規定しています。
つまり、犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前に、捜査機関に対し、自分が犯した罪を自発的に申告し、処分を求める必要があります。
映画やドラマで刑事が犯人に「自首」をすすめるシーンがありますが、これは刑法上の自首にはあたりません(警察が犯人をすでに特定しているため)。
自首した場合は、しなかった場合に比べて、処分や処罰が軽くなる可能性があります。
なお、仮に自首に該当しなくても、捜査機関に対し自ら罪を申告したという事実(上記のサスペンスドラマのパターン)が,量刑において有利に考慮されることはあります。

国選弁護は無料ではないのですか?

国選弁護人の場合は、私選弁護人を選任する場合と異なり、弁護人が事件に着手する際に、料金を支払う必要はありません(いわゆる着手金)。

ただし、刑事訴訟法181条1項は、以下のように定められています。

「刑の言い渡しをしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付することができないことが明らかであるときは、この限りではない」

つまり、国選弁護人の費用も判決の際に、支払を命じられることがあるのです。
ただ実際には、貧困等を理由に負担を命じられないことの方が多いというのが実情です。
ただ、明確な基準はなく、裁判官によってバラつきがある印象です。
起訴前から選任された場合は、大体15~20万円、起訴後から選任ですと10万円弱という印象でしょうか。

勾留請求とはなんですか?

先日坂口杏里さんが、勾留請求却下され、釈放されたとニュースで報じられました。
勾留請求とは、被疑者の身柄拘束を継続するために行う手続です。
被疑者を逮捕しても、身柄拘束をいつまでも行うことはできません。最長でも、逮捕手続に基づく身柄拘束は、72時間で終了してしまうのです。
そこで、検察官は、引き続き被疑者の身柄拘束を求める(これを「勾留」と呼びます)ために裁判所に許可を求めるのです。これを勾留請求といいます。
勾留は、逃亡や証拠隠滅の可能性が認められる被害者に認められます。
坂口さんの場合は、逃亡や証拠隠滅などの危険がないことから、勾留が認められなかったものと思われます。
勾留の期間は、勾留請求の日から10日以内、やむを得ない事情が認められる場合は、さらに10日を超えない程度で期間の延長ができることになっています。
弁護人は、まずは勾留請求が許可されないように、許可されたとしても勾留が延長されないように被告人の早期の釈放を求めて活動しているのです。

裁判所に納付した保釈金は戻ってきますか?

保釈金は、逃亡しないなどの裁判所が定めた誓約事項に違反せず、裁判が終了すれば全額返還されます。裁判中に逃亡したり、証拠隠滅をしたことが発覚すると、保釈金が没収されることがあります。
世間を賑わしたパソコン遠隔操作事件では、被告人が証拠隠滅をはかり保釈が取り消され、1000万円のうち600万円を没収する旨の決定が下されましたのは記憶に新しいところです。
過去激しいケースだと、イトマン事件で被告人が逃亡し行方不明になり、保釈金6億円全額が没収となっています。そのうち3億円を弁護士が保証(保釈保証書)していたようで…、想像するだけでゾッとします。

保釈金の相場はいくらなのですか?

保釈が許可されると、裁判所が定めた「保釈保証金」という金銭を裁判所に納めることで、身柄拘束から解放されます。
保釈金の金額は、事案の性質(重大性、前科の有無等)と被告人の経済力にによって決定されます。
大体150万円から300万円の範囲に収まっているという感覚です。
過去には、20億と定められたケースもあるようです(ハンナン牛肉偽装事件・ハンナン会長)。
なお、控訴審・上告審段階の保釈(再保釈といいます)となると、保釈金の金額が1審段階より高額なものとなります。

罰金刑を言い渡されました。払わないとどうなるのですか?

罰金刑を課され、罰金を納付しないでいると、最終的には労役場に留置され、所定の作業を行うことを義務づけられます。つまり、一定期間刑務所等の施設に拘束され、作業を行うことで、罰金の納付の代わりとする制度が適用されます。
つまり、実質的には懲役刑とほとんどかわりません。
判決の時に、「被告人を罰金50万円に処する。罰金を完納できないときは、金5000円を1日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。」などと言い渡されます。
この場合、罰金を1円も納付しないと、100日間の労役(5000円×100日=50万円)が必要となります。
期限までに罰金を納付せず、連絡もしないでいると、ある日検察庁の担当者が、強制的に身柄を拘束することもあるので、担当者には細目に連絡し、支払の見通しなどの話し合いを誠実に行うべきです。

国選弁護人とはなんですか?

国選弁護人とは、貧困等の理由で弁護人を付けられない人に、国が弁護人を選任する制度です。
被疑者段階では、死刑または無期もしくは長期3年を超える懲役もしくは禁錮にあたる事件において認められます。それ他の事件では、起訴後からの選任となります。
国選弁護人が選任される資産の条件としては、50万円を下回る場合とされています。
国選弁護人は、特定の弁護士を指定することはできません。
岡山弁護士会には、国選弁護人の名簿があり、名簿の順番に国選弁護人が割り振られることになります。
国選弁護人の名簿に登録していると、名簿の順番が近い時期に、弁護士会から連絡があります。
そんなときに、世間をにぎわすような大事件が岡山で起きると、正直ドキドキします。
なお、刑事訴訟法の改正により、平成30年6月までに、被疑者段階においても全ての事件について国選弁護人が選任することができるようになります。

「懲役●年執行猶予●年」とは何ですか?

ニュースで頻繁に耳にする「●●は、懲役●年執行猶予●年に処せられました…」
「懲役」とは刑務所に入って、役務を行わなければならない刑罰です。
「執行猶予」とは、「執行猶予期間内に、他の犯罪を起こさなければ、判決の効力が発生しないことになる」という制度です。
つまり、懲役1年6月執行猶予3年の判決が下されたとしますと、これは「刑罰としては3年の懲役としますが、直ちにこれを執行しません。これから3年間犯罪を犯さなければその刑罰はなかったことにしますよ」という意味なのです。

つまり、執行猶予判決は、判決後も通常の生活を送ることができるのです。
ですので、判決で執行猶予が付されるかどうかは、被告人の今後の人生にとって大きな意味を持つのです。

したがって、弁護人は、執行猶予が付される可能性がある事案については、裁判官に様々な観点から情状酌量を求め、寛大な判決(執行猶予付きの判決)を求めるのです。

前科とはなんですか?

前科とは、過去に「刑罰」を科されたことをいいます。つまり、ある犯罪について起訴され、裁判が

行われ、有罪判決となり、刑罰に処せられた場合に前科が付きます。

よくニュースで耳にする懲役や禁固などの実刑のみならず、執行猶予付判決や罰金刑も前科

なります。公判が開かれず、簡約な手続で罰金が科される略式手続が取られた場合も前科となり

ます。

何らかの罪で逮捕されたものの、不起訴となった場合には前科はつきません(この場合、少年時

代の保護処分歴と併せて前歴と呼ばれます)。

保釈はいつになったらできるのですか?

ニュースでも「芸能人の●●さんが保釈されました」とよく耳にします。
保釈とは、裁判所に身柄拘束からの解放を求める手続です。
裁判所に起訴された後に初めて、保釈の請求を行うことができるようになります。
裁判所から保釈の許可があると、裁判所が定めた保釈金を納付することで、身柄拘束から解放され、自宅などで裁判の準備を行うことができます。
保釈中は、裁判所より「証拠隠滅をしてはいけない」「裁判の日には必ず出頭しなくてはいけない」など、誓約事項が定められ、違反すると保釈が取り消されたり、保釈金が没収されたりするペナルティがあります。
弁護人をしていて、裁判の開廷時間直前になっても被告人の方が出頭されず、電話もつながらないときは、本当にひやひやします。