刑事事件Q&A

月別アーカイブ: 2017年4月

「○」が付きますように

趣味の話を。私の趣味は読書です。

今後読んだ本を定期的に記録していこうと思います。

今日の本は、元裁判官木谷明さんが書かれた本「『無罪』を見抜く」(岩波書店)です。

木谷さんは、主に刑事裁判官をつとめられており、30件以上の無罪判決をだし、すべて

確定しています。

そんな木谷さんの生い立ちから裁判官生活までのヒストリーを一冊にまとめたものがこの本

です。

上司の裁判官の評価などが本音で赤裸々に書かれており、正直ここまで書くかと驚きました

た。

 

私が印象に残っているのは、木谷さんが、最高裁調査官時代の話です。

最高裁には、全国から上告案件が、寄せられます。大量の記録が最高裁判所に押し寄せるわ

けです。私は、このような大量の案件をどのようにして処理していているのか不思議に思っ

ていました。

 

この本では、刑事事件の上告案件の処理の流れも隠すことなく出てきます。

最初に事案の粗選別が行われます。

弁護人(被告人)が作成した上告趣意書(上告の理由を記載した書面)をもとに、「×」

「△」「○」「◎」の4段階に分けられます。

 

①事実誤認を主張している事件は、基本的には最高裁では取り上げないことになるので「×」
②量刑不当だけしか主張していない事件は、最高裁ではほとんど相手にされないから「△」
憲法違反など色々言っていても、結局量刑不当に帰着する事件も「△」
③重要な法律問題を含んでいる事件や判例になりそうな事件、あるいは事実認定でもかなり
微妙と思われる事件は「○」
④超特大の事件や極めて難しい法律問題を含んだ事件には「◎」

 

そして、つけられた符号の種類に従って、その後、担当調査官→裁判官の順番で配点される

ことになるそうです。

とすると、最初の粗選別の分類が非常に重要な意味を持つことがわかります。そしてその帰

趨を決めるのが、一本の上告趣意書であることがわかります。いかに上告趣意書が重要であ

るかがわかる話でした。

 

現在上告趣意書を提出し、結果待ちの事件があり、(現在も当時と同じ手法がとられている

ならば)今頃上告趣意書に「大きな○印」がついていることを祈るこの頃です。

鯉とりまあしゃん

「鯉とりまあしゃん」という方をご存知でしょうか?

福岡に実在した伝説の鯉とりの名人です。

ソフトバンクの孫社長は、部下に、「交渉の秘訣は、鯉とりまあしゃんに学べ」と話してい

たそうです。

 

Fotolia_50171722_S

 

まあしゃんの鯉とりの手法は、鯉を腕に抱くというものです。

彼は、鯉とりをする数日前から、栄養価が高いものを食べ、当日も河原のたき火でじっくり

からだを温めます。

そのまま川に入って水中に横たわると、人肌の温かさを求めて鯉が集まってくるので、それ

を赤ちゃんを抱くように、腕に抱いてそっと受け止める。それがまあしゃんのやり方です。

1日に100匹、全長95mの巨大な鯉を捕まえたこともあるそうです。

 

巷では、士業のマーケティング本やセミナーであふれています。ホームページ、セミナー、

SNSといった「マーケティングツール」、「ターゲットマーケティング」、「マーケティ

ングミックス(4P)」「ブルーオーシャン・レッドオーシャン」…。この業界もマーケ

ティングが必要なんだと叫ばれています。

 

私も、診断士という資格を有していることもあって、マーケティングの重要性・有効性は実

感しています。しかし、弁護士業は、地域に根付いて、長期間かけて行っていくものです。

マーケティング手法を導入し、効果があったとしても、地域のお客様の長期的な支持がなけ

れば、効果は一時的なものとなり、「一発屋」におわってしまいます。

 

鯉が人肌を求めるように、「この人(弁護士)なら安心」という状況があれば、お客様は

自ずから、その事務所に依頼をするのではないでしょうか。

日々の研さんを忘れないこと、一つ一つの事件を誠意をもって取り組み、地域のお役様の信

用を長期間かけて少しずつ築いていくことが、長期的にみると、最高のマーケティング方法

なのだと思います。